2011年4月25日月曜日

自炊派向け漢のカレーレシピ『ホタルイカカレー』

実体験、経験は人を完全に束縛する力を持っている。誰あろう、自分自身が見聞きしたこと以上に真実が無いと感じることを制御することは、なかなか難しいものだ。

例えば、何かの折に動物の解体を一緒に見た後、焼き肉が食べられなかった男性のハナシをする女性の、「男ってこういうところがダメなのよね」と、彼女の他の経験も踏まえたまとめに対して、「あなたが選んだ男性が、たまたまそうだっただけでは?」という水をさしてみたところで、彼女の男性の趣味が変わらない以上、彼女は永遠に血に弱い男性を選び続けることになる。ひょっとしたら、彼女の友人の女性が「私が連れて行った男の人もそうだったわ」と声を揃えたとしよう。しかし、そんな場合でも、真実らしいと推測できるのは「類は友を呼ぶ」という慣用句の確からしさで、決して「男性は流血に弱い」ということではない。
実際、この「男性は流血に弱い」という女性の経験談の根本にあるのは、どんな文脈の雑談であれ、別の意図が含まれるものだということも、言うまでもない。それは、母とはこうだ。父とはこうだ。恋人とはこうだ。という人間関係や性差に対しての厳密さを欠く、個々の経験則の曖昧な一般化による事実捏造の一部であり、「らしさ」という人の個体差を塗り込める方便に過ぎない。

こういった、わざわざ挙げてみれば何の役にも立たない小さな認識が積み重なって、人の事象に対しての枠を作っているとしたら、何を体験しても、その体験を通じてどの様に考えるか。受容できることの幅、深さ、強度というのは、人にとって非常に重要なことだということができる。
人に実際に必要なのは、ポジティブさやリスク管理ができることではなく、一件強く関係している様に見える無関係なことを切り分けて理解する能力であり、過剰に個から全を見ないことではないだろうか。これに対して、無用な幅や多様性が単純な力強さを失わせ、結果として推進力を失わせるというのは、ある意味、そんな単純さを人に求める必要のある側の理論に過ぎない。

カレーにとって、ルゥのとろみとはどんな存在だろうか。一般的なカレーライスのとろみは、水分と小麦粉のものだろう。では、カレーを作る際に、どうしても必要と感じられる水気に対して、人はどの様な認識を持っているだろうか。
カレーを見て「美味しそう」と判断する。つまり経験上、それが美味かどうかを判断する要素として、飯にかけられたカレールゥのとろみは重要な役割を持っている。
しかし、最終的に口に入ったときの素材に絡むスパイスの風味と食感について考えた場合、とろみにのみ着目することは、あまり大きな意味を持たないことに、即座に辿り着くだろう。

前回は、カレーがオイルのスパイス煮であるというひとつの見方を紹介した。他のカレーに対するアプローチの個々の存在理由と真意についても考えてみる必要はないだろうか。
タマネギの水分を十分に抜く理由はなんだろう。ヨーグルトが必要とされる理由は何だろう。カレーのルーツめいたことに合理性を求めたところで、それは既存のものを再現する作業に過ぎない。様々な手順やこだわりも、単に多くの人が判断を停止して定番としているだけの経験則と考えれば、これを一度見直すことで、更に調理を楽しむことができる筈だ。

『ホタルイカカレー』
富山の旬の味覚。ホタルイカの旨味を利用したカレー。
前回に引き続き、旨味と最低限のカレー風味で攻めるので、更なる工夫のベースとしていただきたい。
ホタルイカは酢みそなど、つい繊細なものとして食べてしまいがちだが、所詮はイカ。普通にソースやマヨネーズなどの味とも単純に結合可能だ。
シーフードカレーの存在理由を疑問視する一派の皆さんにも、この調理法を試してみて欲しい。また、これとは関わりなく、お母さんカレーのシーフードカレー(二日目)は、この世から消えてなくなるべきものであると、私は信じている。経験上。
  1. ホタルイカは、ボイルしたものでも、生でも可。生の場合は予めボイルしておく。目玉を取り除くとそれはそれで良い感じ。塩、胡椒、クミンシード、ガラムマサラ、カレー粉、マヨネーズ。ニンニク。生姜。ホウレンソウ、チンゲンサイなどの青菜系の野菜も好みで選び、一口大に切り軽く下茹でしておく。ホウレンソウを使えば風味。チンゲンサイの場合は茎の部分の食感が楽しめる。これは気分で適当に選ぶ。
  2. ニンニクと生姜を適量すりおろしておく。ニンニクの風味をある程度避けたい場合は、ニンニクは全て油に香りを移すことにして、みじん切りにする。
  3. フライパンに油をしく。熱しつつ、クミンシードとみじん切りのニンニクを放り込む。
  4. 熱がまわったらホタルイカを投入。ホタルイカにも適当に熱が回ったところで、塩胡椒を多少強めにする。
  5. ホタルイカの水分が飛ばないうちにマヨネーズとおろしたニンニク、生姜、カレー粉を投入し、馴染ませる。水分が足りないと感じる様なら水を微量投入する。
  6. 青菜を混ぜ込む。塩気、スパイスの具合がここで薄くなる可能性に注意。
※ポイント
魚系の旨味と相性の良いスパイスを工夫する余地は、おおいにある。
ニンニク+マヨネーズ風味とホタルイカの風味を先に確認しておくこともおすすめする。ホタルイカ+ニラのニンニクとマヨネーズ炒めは、上記の手順を援用して簡単に作ることができる。
マヨネーズ、ニンニク、生姜を避けて、グリーンカレー系のレトルトやペーストを仕上げに放り込んでも普通に楽しめる。

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